こんにちは、ヘレンです。
美しくも深い物語の世界へ
あなたをいざなう
「宝塚ヘレン劇場」へ
ようこそ
今日は、ヘレンが書く
物語シリーズです
今回の物語は、
三途の川(さんずのかわ)の
楽しい渡り方
です。
皆さんは、
親や周りの大人に
言われたことはありませんか?
お金は使わずに
貯めておきなさいと。
でも、本当は、
お金を使わずに
貯めようとすると、
かえって損をするんです。
今日の主人公は
お金を貯めようとして
かえって損をしてしまった男の
物語です。
昔々あるところに
六兵衛(ろくべえ)という
男がいました。
六兵衛は
大変なケチで、
お金を使わず
貯めることが
人生の生きがいでした。
お金を使うことが
とにかく嫌いで
それはそれは
お金を貯めこんでいました。
お金がかかるからと言って
お嫁さんをもらうことも
しませんでした。
ある日、近所のご隠居さんに
言われました。
「お前は嫁さんはもらわないのか?
嫁さんはいいぞ。
一人で生きるより、
人生が楽しくなる。
お前も嫁さんをもらったら
どうだい?」
六兵衛は答えます。
「嫁さんをもらったら、
嫁さんに、飯を食わせなきゃ
いけなくなるでしょ。
なんで俺の稼いだお金で
他人を食わせなきゃいけないんだい?」
ご隠居さんは
続けて言いました。
「そうかい。そうかい。
自分の稼いだ金を
他人でなく、
自分に使うってのも
それはそれで
楽しいわな。
ならばどうだい、
明日、近所の芝居小屋に行って
芝居を観ないかい?
市川団十郎っていう
役者はすごいぞ。
生きている間に
一度は見ておいた方がいい。」
六兵衛は答えます。
「芝居なんてとんでもねえ。
あんな無駄なことに
俺の大事な金を使うなんて
想像するだけで
気が狂いそうだ。」
ご隠居さんは、
「そうかい、そうかい、
お前さんは、
ずいぶんと人生を損しているね。」
と言って、帰っていきました。
六兵衛は意味が分かりません。
ご隠居さんは何を言っているんだい。
俺は嫁さんももらわず、
芝居も行かず
お金を貯めているから、
損なんてしていない。
損をしているのは
ご隠居さんの方だろう。
ご隠居さんとのやり取りで
気分を害した六兵衛は、
気晴らしに、
近所を散歩してくるか、
と言って、
近くの海辺に
散歩に行きました。
そこには、なんと
今朝、漁師たちが水揚げをした
鯖が一匹、
捨てられていました。
「おお!
これは得をした!
お金を払わずに
鯖を手に入れることができた。」
それを見ていた
漁師が言いました。
「六兵衛さん、
それは腐っているから
食べない方がいい。」
しかし、六兵衛は、
「君は俺が鯖をただで拾ったことが
気に食わないのかい?
しかしこれは
俺が拾ったんだから、
俺のものだ。
邪魔をするな。」
と言って、
鯖を持ち帰りました。
六兵衛はその夜、
拾ってきた鯖を
刺身にして
一口食べました。
「うまいじゃないか。
全然腐ってなんかいない。
あの漁師は
俺がこんなおいしい鯖を
タダで食べるのが
悔しかったんだな。」
そう言って、六兵衛は
鯖の刺身を平らげて、
眠りにつきました。
朝になり、
六兵衛が目を覚ますと、
そこは、
自分の家ではありませんでした。
「あれ?
どうしたことだ?
ここはどこだ?」
見渡すと、
そこには大きな川が流れており、
そこには、一人の
おじいさんが座っていました。
六兵衛は
おじいさんに聞きました。
「ここはどこなんだい?
俺は自分の家で
寝ていたはずなんだが。」
おじいさんは言いました。
「ここは三途の川じゃよ。
あっちに見えるのが
あの世じゃ。
あんたさんは
死んだんじゃ。」
六兵衛はびっくりしました。
「俺が死んだ!?
何でだい?
俺は昨日まで
ピンピン元気だったんだぜ。」
おじいさんは答えます。
「お前さん、
昨日、腐った鯖を食べなかったかい?
お前さんは
鯖に当たって死んだんじゃよ。」
六兵衛が、
鯖を食べたことを悔やんでいると、
おじいさんが続けて言いました。
「三途の川を渡らないと
そのまま幽霊になって、
あの世にも行けなくなる。
早くこの川を渡った方がいい。」
六兵衛は、言いました。
「死んだものは仕方がない。
幽霊になるのは嫌だ。
早く極楽に行く行き方を
教えてくれ。
川を渡る橋は
どこにあるんだい?」
おじいさんは答えます。
「立派な橋があったんじゃが
あいにくと、
先日の嵐で橋が壊れてしまった。
しかし、六文払えば、
船で渡れる。
一両払えば、
豪華客船で渡れるぞ。
どちらがいいかい?」
六兵衛は答えます。
「お金を取るのかい?
あんたさんは、
ずいぶんケチなんだね。
お金を取るんだったら、
いいよ。
俺は泳いで渡る。」
六兵衛は、
三途の川を
泳いで渡ることにしました。
三途の川は
穏やかなので、
難なく「あの世」まで
泳いで行けると
タカをくくっていたところ、
川の中頃まで来たところで
様子が変わりました。
川の流れが激しくなったのです。
六兵衛は必死に泳ぎますが
激しい流れに流されてしまいます。
「助けてくれ~!
死んでしまうよ~!!」
もう死んでいるにも関わらず
六兵衛は叫びました。
六兵衛は、
川の中頃にある
大きな岩につかまりながら
何とか流されずにこらえていると、
そこに一隻の
大きな豪華客船が
通りかかりました。
船の上から
聞き覚えのある声がします。
「おーい!
そこにいるのは
六兵衛さんじゃないか。」
なんと、豪華客船に乗っていたのは
近所のご隠居さんでした。
ご隠居さんはずいぶんな年齢でしたから、
大往生で、
ちょうど昨夜、
息を引き取ったところだったのです。
六兵衛は、
大声で懇願しました。
「ご隠居さん、
助けてくれ。
このままでは
死んでしまう。」
隠居さんは
呆れて言いました。
「もうお前さんは
死んでおるよ。」
そう言って、
ご隠居さんは
六兵衛を豪華客船に
乗せてあげました。
そして言いました。
「あのな、六兵衛さん。
お金は使うためにあるんじゃよ。
使わんと、意味がないんじゃ。
わしは、三途の川も
楽しく渡ろうと思ってな、
大金はたいて、豪華客船で
渡ることにしたんじゃ。
贅沢な船旅は何とも楽しい。
死んでもこんなに楽しい経験が
できるなんて、
わしは幸せじゃ。
お前さんも考え直しなさい。」
そう言われたところで、
六兵衛は目を覚ましました。
見渡すと、
そこはいつもの自分の家でした。
どうやら
夢だったようです。
六兵衛は
やっと気づきました。
お金は使ってこそ、
価値がある。
お金を貯めるのは、
かえって人生を損する
ということを。
それから、六兵衛は
芝居を観に行ったり、
素敵なお嫁さんを
もらったりして、
楽しい楽しい
一生を送ったそうです。
昔々のお話でした。
◆◆ミニ解説◆◆
今日の物語は、
「地獄八景亡者戯」
(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)
という落語を元に書きました。
お金に振り回されるのでなく、
お金をうまく使って、
人生を楽しく生きたいものです。
◆◆物語シリーズ◆◆
大奥は女の園だと思い込んでいませんか?
それは刷り込みかもしれません。
桃太郎は「善」で鬼は「悪」は刷り込みか!?
「できる女性」は、他人にも自分に厳しく苦悩が多いのかもしれません
おばあさんは「山に芝刈り」も「川に洗濯」も
一人でやろうとする女性でした。
そんな女性の妊活奮闘劇
◆◆おススメ記事◆◆
この記事へのコメント